blog

ブログ

虫歯と歯周病の違い|しみる・痛くないは要注意?歯を失うリスクと予後

虫歯と歯周病の違い|しみる・痛くないは要注意?歯を失うリスクと予後

「歯がしみるけど、虫歯なのか歯周病なのか分からない」
「痛みはないけれど、このまま放っておいて大丈夫?」

虫歯と歯周病は、どちらもとても身近な病気ですが、
原因も、進み方も、その後の予後もまったく違います。

この記事では、

  • 虫歯と歯周病の違い
  • 症状や菌の特徴
  • 歯を失うリスク
  • 放置した場合にどうなるのか

を、できるだけ分かりやすくお伝えします。


虫歯と歯周病は何が違う?症状・原因・菌の違い

そもそも病気の正体が違います

まず大前提として、虫歯と歯周病はまったく別の病気です。

  • 虫歯
     歯そのものが溶けていく病気
  • 歯周病
     歯を支える骨や歯ぐきが壊れていく病気

実際の診療では、
虫歯と歯周病が同時に進行している方も少なくありません。


症状で見分けたい人が一番多いですが…

検索でよく見られるのが、「症状で見分けたい」という疑問です。

  • しみるのはどっち?
    虫歯でも歯周病でも起こります。
    実際には、知覚過敏や噛み合わせなどが重なっているケースも多く、
    症状だけで判断するのは難しいのが現実です。
  • 痛いのはどっち?
    虫歯は進行すると痛みが出やすく、
    歯周病はかなり進むまで痛みが出にくい傾向があります。
  • 出血や口臭があるのは?
    歯周病でよく見られる症状です。

このように、
「しみる=虫歯」「痛くない=安心」とは限りません。


原因となる菌も違います

虫歯と歯周病は、原因となる菌も異なります。

  • 虫歯の原因菌
     ミュータンス菌、ラクトバチルス菌
  • 歯周病の原因菌
     P.ジンジバリス、T.フォーサイシア、T.デンティコーラ など

菌が違えば、
治療方法も、その後の管理の仕方も違うということになります。


虫歯と歯周病の予後|何年もつ?歯を失うのはどっち?

虫歯は「治る病気」ではありません

虫歯は、治療をすれば元に戻る病気ではありません。
治療とは、溶けてしまった部分を削り、詰め物や被せ物で補っている状態です。

一度削った歯は、元の強さには戻らないため、

  • 詰め物は平均 5〜10年
  • 被せ物は 7〜15年
  • 神経を取った歯は 10〜20年でトラブル

が起こる可能性があります。

虫歯は、
「治す病気」ではなく「これ以上悪くしないよう管理する病気」です。


歯周病は、歯を失う最大の原因です

歯を失う原因として、最も多いのが歯周病です。
日本では、成人の約8割が歯周病、またはその予備軍といわれており、
決して特別な病気ではありません。

実際に、歯を失う原因をみると、
約4割が歯周病によるものとされており、虫歯よりも多いというデータがあります。

歯周病は、痛みが出にくく、
気づかないまま年単位で静かに進行していく病気です。

👉
当院では、歯周病の進行度を正確に診断したうえで、
状態に合わせた歯周病治療を行っています。
▶︎ 歯周病治療の診療内容はこちら


「気づいたら進んでいた」歯周病

私たちが診療室でよく聞くのが、こんな声です。

「子どものことを優先して、仕事も忙しく、
自分の歯のことはずっと後回しでした。
痛みもなかったので大丈夫だと思っていたら、
気づいた時には歯周病が進んでいて…」

歯周病は、ある日突然悪くなる病気ではありません。
忙しい毎日の中で、少しずつ進んでいくため、
自覚したときには歯を残すのが難しい状態になっていることもあります。


歯周病が進行すると、どんな選択肢になる?

歯周病が進行し、歯を支える骨が大きく失われると、
抜歯という判断が必要になるケースも出てきます。

その結果、

  • インプラント
  • 入れ歯
  • ブリッジ

といった治療が選択肢になることもあります。

👉
歯を失った場合の治療方法(インプラント・入れ歯など)については、
こちらで詳しくご紹介しています。

▶︎ 歯を失った場合の治療方法を見る


虫歯と歯周病、どっちが怖い?

短期的に困りやすいのは虫歯。
長期的に歯を失いやすいのは歯周病。

そして最も注意が必要なのは、
虫歯と歯周病が同時に進んでいる状態です。


虫歯か歯周病かは、検査をしないと分かりません

「しみる」「違和感がある」「痛みはないけど不安」
こうした症状だけで、虫歯か歯周病かを判断することはできません。

実際には、虫歯と歯周病が同時に進んでいるケースも多く、
見た目や自覚症状だけでは判断がつかないことがほとんどです。

そのため歯科医院では、次のような検査を行い、
今どんな状態なのかを客観的に確認します。

・レントゲン検査
 歯の内部の虫歯や、歯を支える骨の減り具合を確認します。

・歯周ポケット検査
 歯と歯ぐきのすき間の深さを測り、歯周病の進行度を調べます。

・歯ぐきからの出血や炎症のチェック
 歯周病が活動しているかどうかを判断する大切な指標です。

必要に応じて、これらの検査結果をもとに、
「虫歯が主体なのか」「歯周病が主体なのか」
あるいは「両方が関係しているのか」を総合的に判断します。

症状が軽いうちに状態を把握できれば、
歯を削らずに済んだり、歯を失わずに済む可能性も高くなります。

まとめ|虫歯と歯周病の違いを知ることが、歯を失わないための第一歩

虫歯と歯周病は、症状が似ていても
原因・進行の仕方・歯を失うリスクが大きく異なります。

特に歯周病は、日本人の多くが抱えている身近な病気でありながら、
気づかないまま進行し、最終的に歯を失う原因になることが最も多い病気
です。

「しみるから虫歯」「痛くないから大丈夫」と自己判断せず、
虫歯なのか歯周病なのか、あるいは両方なのかを正しく知ることが、
将来インプラントや入れ歯にならずに済むかどうかを左右します。

今の状態を知り、適切に管理していくことが、
歯を長く守るための一番の近道です。


参考リンク(外部)

歯周病と歯を失う原因についての公的データは、
8020推進財団(厚生労働省関連)でも紹介されています。
▶︎ https://www.8020zaidan.or.jp/

杉山 健太郎

執筆者

杉山デンタルクリニック 院長

杉山 健太郎

東京歯科大学卒業後、杉山デンタルクリニックの院長となる。
日本口腔外科学会認定口腔外科専門医で、臨床研修指導歯科医師の資格も保有。多くの病院で口腔外科疾患やインプラント治療に従事し、患者さん一人ひとりにあった治療計画を提案しつつ、患者さんのQOL向上を目指す。