有床義歯学会に参加しました|入れ歯が“合わない理由”を多角的に学び、当院の義歯治療に生かします
いつも杉山デンタルクリニックのブログをご覧いただき、ありがとうございます。
先日、診療の合間に 公益社団法人 日本有床義歯学会 の学術大会に参加してきました。
当院ではインプラントについての情報発信が多いのですが、義歯(入れ歯)治療にも力を入れており、今回の学会は改めて多くの学びがありました。
「入れ歯が合わない」「外れやすい」と感じる方や、
ご家族のお口について不安を抱えている方に、何か役立つ内容になれば幸いです。

有床義歯学会で学んだ“義歯づくりの本質”
義歯が安定する・しない理由はひとつではありません
今年の有床義歯学会では、
- 下顎吸着義歯
- デジタル技術を用いた義歯製作
- 咬合(噛み合わせ)の考え方
- 口腔機能低下症とリハビリテーション
など、義歯治療を多角的に扱う講演が行われました。
中でも強く感じたのは、
「義歯が合う・合わない」は単一の原因で決まるものではない
ということです。
たとえば、以下のような要素が複雑に関わり合っています。
- 顎の骨(顎堤)の形
- 粘膜の状態
- 咬合(噛み合わせ)
- 義歯の素材や設計精度
- 生活習慣
- 口腔周囲筋(唇・頬・舌・表情筋)の働き
義歯治療では、これらを総合的に診ることが欠かせません。
口腔周囲筋は義歯を支える“要素のひとつ”
今回の講演では、義歯の安定に関連する要素のひとつとして
口腔周囲筋の働き がたびたび話題になりました。
もちろん、
“筋力が弱い=義歯が合わない”
という単純な構造ではありません。
ただし、年齢とともに筋肉の使い方が変化することは確かで、
「外れやすくなった」「動きやすい」
といった感じ方につながるケースもあります。
義歯を作る際は、義歯そのものの精度だけでなく、
患者さんの口腔機能の状態を丁寧に理解する姿勢 が重要であると再確認しました。
義歯治療は“入れ歯だけ”を見る医療ではない
義歯は作って終わりではなく、
装着後の調整や、顎・筋肉・噛み合わせの変化を見守りながら完成していく治療です。
今回の学会でも、
義歯の精度(モノ) × 口腔機能(ヒト)
の両方を診る重要性が繰り返し語られていました。
当院の義歯治療で大切にしている考え方〜歯科技工士とともに取り組む“丁寧な義歯づくり〜
精密義歯が自由診療で高額になる理由は、“素材”と“工程”の両方にあります
「精密義歯は高い」と感じる方も多いですが、
その理由は 素材の選択 と 製作工程の精密さ にあります。
精密義歯では、
- 変形の少ない印象材
- 精度を維持しやすいレジン・人工歯
- 噛み合わせ再現性の高い器材
など、長く安定した使用のための素材 を選びます。
さらに、
- 型取り
- 咬合採得(噛み合わせの計測)
- 設計
- 試適(試し入れ)
- 最終調整
といった工程に時間をかけ、ひとつひとつ丁寧に積み重ねることで、
その方のお口に合った義歯へ近づけていきます。
これらの理由から、精密義歯は 自由診療 となっています。
歯科技工士と歯科医師が“同じ患者さんを一緒に見る”義歯づくり
当院では精密義歯製作を担当する 歯科技工士(鈴木勝比古さん) と密に連携しています。
必要なケースでは鈴木さんが医院へ来て、
患者さんのお口・噛み合わせ・筋肉の動きなどを歯科医師と一緒に確認しながら微調整を行います。
模型やデジタルデータだけでは分からない“生きた情報”を共有し、
双方が同じ方向を向いて義歯を仕上げることで、
フィット感や安定性、使いやすさが大きく変わります。
入れ歯のお悩みは、原因も解決方法もお一人ずつ異なります
年代に関わらず、入れ歯でお困りの方はもちろん、
ご家族の義歯について心配されている方からのご相談も多くいただいています。
- どこに相談すればいいのか分からない
- 作り直しても合わない
- 外れやすく食事がしにくい
といったお悩みに対して、
原因を丁寧に整理し、
その方にとって最も現実的で負担の少ない義歯の形を一緒に探すこと
を大切にしています。
まとめ:義歯づくりは“患者さんと向き合う医療”です
義歯は、食事・会話・表情・生活の質(QOL)に大きく影響する治療です。
見た目だけでなく、「噛める」「使いやすい」という機能性がとても重要です。
今回の有床義歯学会で得た学びを、これからの診療に丁寧に生かしながら、
患者さん一人ひとりに合った義歯治療を追求していきたいと思います。
入れ歯でお困りの方、ご家族の義歯に関するお悩みがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
当院の義歯治療については、
▶︎ 入れ歯・義歯治療のご案内 でも詳しくご紹介しています。

執筆者
杉山デンタルクリニック 院長
東京歯科大学卒業後、杉山デンタルクリニックの院長となる。
日本口腔外科学会認定口腔外科専門医で、臨床研修指導歯科医師の資格も保有。多くの病院で口腔外科疾患やインプラント治療に従事し、患者さん一人ひとりにあった治療計画を提案しつつ、患者さんのQOL向上を目指す。