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歯周病と糖尿病、実は二人三脚の病気?放置しないための予防と治療

歯周病と糖尿病、実は二人三脚の病気?放置しないための予防と治療

歯周病と糖尿病には「切っても切れない深い関係」があります。
「糖尿病を持っている人は歯周病になりやすい」「歯周病があると糖尿病が悪化しやすい」──このように、どちらか一方を放置するともう一方に悪影響を及ぼすことが分かってきました。
特に40代〜60代は、歯周病が進みやすく糖尿病予備軍も増える世代。両方をケアすることが健康寿命の延伸につながります。
この記事では、歯周病と糖尿病が互いに悪化させるメカニズムや、予防・改善のためのポイントを、医科歯科連携の観点からわかりやすく解説します。

歯周病と糖尿病の関係|悪化のメカニズムを解説

歯周病菌が全身に広がる仕組み(炎症反応とサイトカイン)

歯周病は「歯ぐきの炎症」だけにとどまりません。進行すると歯ぐきから出血しやすくなり、そこから歯周病菌や炎症物質(サイトカイン)が血流に入り込みます。
血管に入った菌やサイトカインは全身を巡り、動脈硬化や心臓病、さらには糖代謝の悪化などを引き起こすリスクを高めます。
つまり、お口の中の炎症が体全体に「火事」を広げてしまうのです。
この仕組みはサンスター財団制作の動画でも紹介されており、視覚的に理解できます。
参考:Sunstar Foundation 動画(YouTube)

糖尿病が歯周病を悪化させる理由(インスリン抵抗性)

糖尿病では血糖値が高い状態が続きます。血糖が高いと血管や免疫機能がダメージを受け、細菌に対する防御力が低下します。
その結果、歯周病菌に感染しやすくなり、炎症も治りにくくなるのです。
さらに、歯周病による炎症がインスリン抵抗性を悪化させ、糖尿病のコントロールを難しくします。
まさに「歯周病が糖尿病を悪化させ、糖尿病が歯周病を進行させる」という悪循環に陥ります。

歯周病が糖尿病を悪化させる理由(合併症リスク)

歯周病による慢性的な炎症は、血糖コントロールを乱し、糖尿病の合併症リスクを高めます。
代表的な合併症には以下のものがあります。

  • 動脈硬化や心筋梗塞
  • 腎症による人工透析のリスク
  • 網膜症による失明

実際、日本糖尿病学会でも「歯周病治療は糖尿病管理に有効」と記載されています。
参考:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」

ガイドラインでも明らかになった「歯周病と糖尿病の関係」

近年の研究で「歯周病治療を行うと血糖コントロールが改善する」ことがわかってきました。
これは炎症反応を抑えることでインスリン抵抗性が改善するためです。
医科と歯科の両方が関わることで、患者さんの全身の健康を守ることが可能になってきています。

糖尿病と歯周病を改善するには?医科歯科連携の重要性

毎日のセルフケアでできること

歯周病と糖尿病の悪循環を断ち切るには、まずはご自宅でのケアが大切です。
– 歯と歯ぐきの境目を意識した丁寧な歯磨き
– デンタルフロスや歯間ブラシを使った歯間清掃
– 規則正しい食生活とバランスの良い食事
– 十分な睡眠とストレス管理
これらの生活習慣は、歯周病と糖尿病の両方の改善に効果があります。

歯科医院で行う専門的ケア

ご自宅のケアでは落としきれない歯石やバイオフィルム(細菌のかたまり)は、歯科医院での専門的クリーニングが必要です。
糖尿病患者さんは特に歯周病が進行しやすいため、定期的に歯科でチェックを受けることが重要です。
当院では予防歯科を重視し、患者さま一人ひとりの状態に合わせたメンテナンスを行っています。
詳しくはこちら:予防歯科について

医科歯科連携で広がる可能性

糖尿病と歯周病は、お互いの治療が密接に関わります。
そのため、糖尿病内科と歯科の連携が今後ますます重要になります。
例えば、糖尿病内科の医師と情報を共有しながら歯周病治療を進めることで、血糖値のコントロールが改善したという報告も多数あります。
また当院では、最新の光殺菌治療ブルーラジカルを導入しています。
薬剤を使わず光で歯周病菌を減らす治療法で、全身の炎症リスクを下げるサポートにもつながります。
参考記事:ブルーラジカルとは?歯周病治療の新時代

生活習慣改善と歯科治療の相乗効果

糖尿病の改善には「食事・運動・薬物療法」が欠かせません。そこに「歯科治療」を組み合わせることで、相乗効果が期待できます。
例えば歯周病治療を行うと炎症が減少し、血糖値が下がりやすくなることが研究で示されています。
つまり、歯科治療が糖尿病治療の一部になるのです。

まとめ|歯周病と糖尿病を一緒にケアして健康寿命を延ばす

歯周病と糖尿病は、互いに悪化させ合う「二人三脚の病気」です。
しかし、定期的な歯科メンテナンスと毎日のセルフケア、さらに医科歯科連携による総合的な取り組みで改善が期待できます。
「糖尿病だから仕方ない」とあきらめず、歯周病治療を生活に取り入れることが、健康寿命を延ばす大きな一歩になります。
当院では糖尿病の方の歯周病治療や予防にも力を入れています。気になる方はぜひご相談ください。

杉山 健太郎

執筆者

杉山デンタルクリニック 院長

杉山 健太郎

東京歯科大学卒業後、杉山デンタルクリニックの院長となる。
日本口腔外科学会認定口腔外科専門医で、臨床研修指導歯科医師の資格も保有。多くの病院で口腔外科疾患やインプラント治療に従事し、患者さん一人ひとりにあった治療計画を提案しつつ、患者さんのQOL向上を目指す。