歯医者は痛くなってから行くと損?定期検診の本当の意味を、歯科医がやさしく解説
「歯が痛くなったら歯医者に行く」
そう考えている方は、決して少なくありません。
忙しい毎日の中で、症状がない状態で歯科医院に通うのは、どうしても後回しになってしまいますよね。
実際、これまでそれで大きな問題がなかった、という方も多いと思います。
ただ、日々診療をしていると、痛みが出てから受診したことで、結果的に治療が大きくなってしまったというケースを少なからず目にします。
この記事では、
・なぜ「痛くなってから」だと治療が大きくなりやすいのか
・定期検診にはどんな意味があるのか
について、できるだけ分かりやすくお話しします。
歯が痛くなってから歯医者に行くと、治療が大きくなりやすい理由
歯が痛くなってから来院する人は、実は少なくありません
「忙しくて時間が取れない」
「痛みが出てからで十分だと思っている」
こうした理由で、症状が出てから歯医者を受診する方は多くいらっしゃいます。
これは特別なことではなく、これまでの生活の中で自然に身についた行動とも言えます。
痛みが出た時点で、歯の中では何が起きている?
虫歯や歯周病は、初期のうちはほとんど自覚症状がないことが多い病気です。
そのため、「特に問題はなさそう」と感じている間にも、少しずつ進行しているケースが珍しくありません。
痛みが出てきた時点では、
・虫歯が神経に近づいている
・歯ぐきの炎症がかなり進んでいる
といった状態になっていることが多くなります。
この段階になると、
・神経の治療が必要になる
・被せ物などの処置が必要になる
・治療回数が増える
など、治療の負担が大きくなりやすくなります。
トラブルが起きてからの治療が、長引きやすい理由
痛みが出てからの治療では、まず炎症を落ち着かせる必要があります。
そのため、応急処置から始まり、段階的に治療を進めていく流れになることが多くなります。
「きちんと治したはずなのに、数年後にまた同じ歯を治療することになった」
という経験がある方もいらっしゃるかもしれません。
これは患者さんのケアが足りなかったという話ではなく、病気が進行してから治療を始めたことによる影響であることがほとんどです。
急な受診が難しくなってきている背景について
最近、「急に歯が痛くなったけれど、予約が取りにくい」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
これは当院だけの話ではなく、全国的に見ても同じような傾向があります。
背景には、
・歯科医院を受診する人が増えていること
・一人ひとりの診療時間をできるだけ確保したいという考え
があります。
さらに、年単位の視点で見ると、今後は歯科医師や歯科衛生士の不足が進むことも予想されています。
少子化の影響で医療に携わる人材が減る一方、予防への関心は高まり、歯科医療を必要とする方は増えているため、受診の需要が供給を上回る可能性があるという見方もあります。
こうした流れは、日本だけのものではありません。
海外に目を向けると、スウェーデンやアメリカなど、定期検診を前提とした歯科医療が一般的な国もあります。
これらの国では、「痛くなってから歯医者に行く」よりも、
問題が起きる前にチェックを受けることが当たり前という意識が根付いています。
定期的に通うことで、歯のトラブルはどう変わるのか
定期検診で確認しているのは「問題が起きる前の変化」
定期検診というと、「歯のクリーニングをするだけ」と思われがちですが、実際にはそれだけではありません。
・虫歯の初期の変化
・詰め物や被せ物の状態
・歯ぐきのわずかな腫れや出血
・噛み合わせの変化
など、トラブルが起きる前の小さなサインを確認しています。
「特に問題はありませんでしたね」
と言える状態を保つこと自体が、定期検診の大切な役割です。
定期的に通っている人ほど、結果的に治療が少ない理由
定期的にチェックを受けている方は、
・小さな変化の段階で対応できる
・治療がシンプルで済む
・通院回数や治療期間が短くなる
といった傾向があります。
一見、通院回数が増えているように感じても、長い目で見ると歯科治療にかかる負担が軽くなっているケースが多いのです。
定期的な歯科健診は、将来の負担にも関係する可能性があります
国や専門機関では、口腔の健康を保つことが、全身の健康や生活の質に深く関わるという考え方が示されています。
虫歯や歯周病が進行してから治療を行う場合と、早い段階で変化に気づいて対応できた場合とでは、
治療の内容や通院の回数、日常生活への影響が大きく異なることは、日々の診療の中でも実感するところです。
こうしたことから、
定期的に状態を確認しながら関わっていくことで、
結果として治療の負担や通院の大変さを軽くできる可能性がある――
そのように考えることは、決して特別なことではないと思っています。
国としても、歯科口腔保健を生涯にわたって支えていく重要性が示されており、
定期的な健診や予防的な関わりが重視されています
(参考:厚生労働省)
私たちが大切にしている関わり方
私たちは、すべての方に同じ通い方を求めたいわけではありません。
ただ、これまで多くの患者さんを診てきた中で、
定期的に状態を確認しながら関わっていくほうが、結果的に治療も生活も楽になるケースが多い
と感じています。
そのため当院では、困ったときだけ対応する歯科医院というより、
大きなトラブルになる前に、一緒に確認していく場所でありたいと考えています。
どんな関わり方が合うかは、その時々で変わって構いません。
気になることがあれば、治療の前でも後でも、遠慮なく声をかけてください。
👉 当院の定期検診・メンテナンスについてはこちら
参考資料 厚生労働省 歯科口腔保健の推進について

執筆者
杉山デンタルクリニック 院長
東京歯科大学卒業後、杉山デンタルクリニックの院長となる。
日本口腔外科学会認定口腔外科専門医で、臨床研修指導歯科医師の資格も保有。多くの病院で口腔外科疾患やインプラント治療に従事し、患者さん一人ひとりにあった治療計画を提案しつつ、患者さんのQOL向上を目指す。